日本共産党茨城県委員会は8月10日、橋本昌茨城県知事あてに、東日本大震災の被災者を支援し、原発から県民のくらしを守るよう、第5次要請をしました。

第5次要請には大内久美子茨城県議をはじめ、市町村議ら25人が参加。
▽学校や幼稚園、保育園などでの放射線測定▽モニタリングポストの全市町村への設置▽土壌の除染作業基準の策定▽東電に対する補償対応の要請▽東海第2原発の廃炉▽液状化対策▽損壊住宅の修繕費補助▽学校や保育所、幼稚園の耐震化促進-などを求めました。

県は7月末から8月上旬にかけて、ヘリコプターによるモニタリング調査を実施したと説明。
8月中に結果を知らせるとの見通しを示しました。

守谷、北茨城の両市で土壌汚染低減化対策の実験を始めたとして、低減化対策を早急に確立するよう国に求めると語り、「市町村ごとの被災家屋の数字は届いているが、県内の被災者数は把握していない。全壊などで民間アパートなどに避難していれば、応急仮設住宅として取り扱う」と表明しました。

参加者らは、東北3県からの被災者受け入れ対応などが市町村任せで、被災者支援策もバラつきがあると指摘。「災害救助法の実施主体になっている県がイニシアチブを発揮すべきだ」と要請しました。

(2011年8月11日・しんぶん赤旗首都圏版より転載)

*「続き」に要請書全文を掲載しています。PDFは党県議団のページにあります。

被災者支援、震災復旧、原発から暮らしを守る要請書(第5次)

日本共産党茨城県委員会は、今回の震災に関して3月15日と3月25日、3月30日、4月13日に橋本知事に緊急要請を行いました。さまざまな点で改善がはかられたことに敬意を表します。
しかし今回の震災被害、原発事故被害は未曾有であり、その後の県民の要望を踏まえ以下の点について要請をいたします。

[1]放射能測定の強化

(1)福島原発の水素爆発以降に発生した放射性物質の拡散状況を明らかにしてください。
(2)モニタリングポストを国・県の責任で県内すべての市町村に配置・増設してください。
(3)小・中・高校、特別支援学校、保育所・幼稚園、公民館、通学路、公園などでのきめ細かな放射線量の測定を行ってください。また測定器を各学校等に配布してください。確認できた汚染個所については、国の予算措置を求め除染処理をしてください。なお、校庭・園庭などの汚染土除去の基準(1マイクロシーベルト/時)の引き下げを求めてください。
(4)市町村の除染に県補助を行ってください。表土除去した土等の保管基準を設け、保管場所は国の責任で行い、二次被害をおこさないようにしてください。父母や市民の力を借りる場合は、線量の把握、装備や服装など県としての除染作業基準をつくり徹底をはかってください。子どもの被放射線量基準を医学的根拠をもとに明確にしてください。
(5)公園は子どもが使用することから、安全基準を年間20ミリシーベルトから1ミリシーベルトに変え、モニタリングも地表、50センチメートルでも行ってください。霞ヶ浦運動公園など高い放射線量が測定されたところでは、除染を計画してください。
(6)福島県は、200万人県民の健康調査を実施する方針を決定しました。本県でも希望者の健康調査を実施してください。その際、問診、血液検査だけでは放射線の影響を正確に把握することは困難です。健康への影響を判断する手段としては、体内被曝量の計測が必要です。ホールボデーカウンター(体内被曝量測定器)を市町村ごとに必要数を配備してください。経費は、国と東電に求めて下さい。
(7)農産物の安全性確保のため、農産物の放射能汚染(ベクレル値)を測定できる体制を国と県の責任で行い、希望する農家の農産物の測定を行ってください。
(8)学校給食の食材の放射能検査を実施してください。農産物等の放射能検査測定器購入費の補助をしてください。牛久市では補助で購入できましたが龍ケ崎市が購入時には補助金はありませんでした。購入する自治体にはすべて補助してください。
(9)飲料水の水源地となる霞ヶ浦には56本の河川が流入しています。放射性物質の霞ヶ浦への蓄積に対する調査を行い公表してください。
(10)下水汚泥、廃棄物焼却施設での飛灰・主灰など放射性物質の保管場所は国の責任で確保し管理を徹底してください。現在フレコンバック等に封入し、処理場内に保管されていますが、その安全性、作業基準を明確にしてください。
(11)各家庭などの雨どい下の放射線レベルが高い傾向にあります。市町村と連携し各家庭における放射線量の測定の推進を図ってください。家庭用手引書を作成配布し、各家庭でできる対策を徹底してください。
(12)放射能対策に要した自治体負担は、県としてイニシアチブをとり、東電に請求してください。

[2]放射能被害の全面補償

(1)原子力損害賠償紛争審査会の中間指針(8月5日)では、避難費用や避難生活による精神的苦痛への賠償を明確にしました。本県には、福島県、宮城県、岩手県などから約2000人(6月30日時点)が避難されています。民間アパート等に避難している場合も災害救助法の応急仮設住宅(借り上げ住宅)として対応してください。公務員住宅、雇用促進住宅、UR住宅についても応急仮設住宅として扱い、少なくとも入居期限を2年間としてください。エアコン設置を行ってください。
(2)中間指針は政府などの指示によらない「自主避難」についても「避難費用などを賠償する方向で一致した」と報道されています。自主避難者への賠償を国に求めてください。
(3)県内農業産地の現状は「購買未収金が落とせない」「税金が払えない」「借入金が返せない」状況です。お盆前の仮払いは切実です。農畜産物、水産業、水産加工、商工業被害の仮払いを一刻も早く実施するよう、国と東電に県として求めてください。
(4)商工業者の風評被害に関し、東電水戸支店は受け付けをしていません。県として対応するよう求めてください。
(5)福島原発事故の収束に東電関連会社で働く労働者が過酷な労働条件のもとで働いています。現場の運転員等は東電が正社員として雇用し、事業の安全を一元的に管理するよう東電に求めてください。

[3]原発からのすみやかな撤退、東海第2原発は廃炉に

(1)原発事故は、他の事故にはみられない「異質の危険」があります。放射性物質が外部に放出されると、抑える手段は存在せず、被害は空間的にどこまでも広がり、時間的にも将来にわたって危害をおよぼし、地域社会の存続さえも危うくします。こうした危険性をもつ原発を、世界有数の地震国であり、世界1、2の津波国である日本に集中立地することは、危険きわまりないことです。「安全神話」と決別し、県として「原発からの撤退」の政治的決断をおこなうことを求めます。
(2)世界で原発を廃炉にした平均年数は22年です。33年目をむかえ老朽化した東海原発の危険性は多大です。日本原電は、今年11月の再稼働をめざしていますが、県として 1. どの程度の地震、津波を「想定」しているのか、原発のもつ潜在的危険性とその対策について、県民にきちん説明してください。 2. 福島で現実となった20キロメートル圏、30キロメートル圏の避難や屋内退避などを想定した防災計画をきちんとたてて下さい。 3. 東海原発30キロ圏に100万人が生活しています。避難は可能なのかなども検討し、 4. 福島原発事故の原因と教訓をふまえた基準での安全審査・対策強化なしに、再稼働は認めないでください。地元住民の合意が得られない場合は、再稼働を認めない立場に立つことを求めます。
(3)原子力の推進機関から独立した規制機関のすみやかな確立が急務です。しかし現在の原子力安全・保安院は、規制機関としての責任を果たすどころか、「やらせ問題」に深く関与するなど、電力会社と一体となって「安全神話」を垂れ流し、国民を欺いてきた震源地です。現在の原子力安全・保安院は解体し、推進機関からも電力会社からも完全に独立し、「安全神話」と決別した組織と体制を新たにつくることを国に求めてください。
(4)日本の自然エネルギーは、大きな可能性を持っています。太陽光、中小水力、地熱、風力だけでも、20億キロワット以上と推定されています(環境省など)。自然エネルギーの本格的導入は、エネルギー自給率を高め、新たな仕事と雇用を創出し、地域経済の振興と内需主導の日本経済への大きな力にもなります。
原発の立地の本県で、先進的な自然エネルギー開発をすすめ、新しい仕事と雇用を創出していくことを求めます。原発立地自治体への交付金などを、自然エネルギーの開発・普及を支援するものに改善するよう国に求めてください。自然エネルギーによる電力の買い取り制度を改善し、固定価格での全量買い取りを国に求めてください。
太陽光発電パネル設置への県補助を復活してください。

[4]生活再建、地域の復旧

(1)県内の住宅、商店、工場等の被害は甚大です。被害認定を早急におこなうよう市町村の体制強化を援助してください。液状化被害認定基準が変更され「一部損壊」と判定された家屋の再調査を徹底してください。
(2)瓦やブロック塀などの災害ゴミの受け入れ期限を決めている市町村があります。いまだ「災害ゴミ」は、後をたたない状況であり、市町村との協議を行ってください。
(3)住居の損壊、液状化等により民間アパートなどに避難している県内避難者数を明らかにしてください。またその場合、応急仮設住宅としてあつかってください。
(4)損壊した個人住宅の改修・再建のため、被災者生活再建支援法の適用拡大と支援金の増額を国に求めてください。半壊世帯でも「解体せざるを得ない」場合は、支援の対象になること。災害救助法の応急修理制度があることを知らせ、被災者の生活再建を援助してください。
(5)県災害見舞金は、支援法との併給を実施し、「一部損壊」にも適用してください。岩手、山形、福島、富山、静岡、鳥取、島根、岡山、広島、山口、大分などでは300万円(全壊)の県独自助成制度をつくっています。本県でも独自補助制度をつくってください。
(6)「社会資本整備総合交付金」が住宅修繕に活用できることを市町村に徹底するとともに県として国に予算要求を行ってください。
(7)修繕費助成、借り入れ費用の利子補給、住宅リフォーム助成制度の緊急実施を図って下さい。
(8)液状化被害住宅では、地盤を改良し基礎を直すのに1千万円もかかる状況があります。国に地盤改良への助成を求めてください。県として開発業者の責任はなったかの調査を行い、住民との話し合いの場をもってください。商店、工場についても被災者生活再建支援法を適用するよう国に働きかけ、県の独自制度をつくってください。
(9)災害援護資金に準ずる県の制度をつくってください。
(10)水戸二高などの県立高校、県民文化センター・県立図書館など教育・文化施設の復旧を優先して実施してください。
(11)公立病院再建への補助拡充、民間病院の補修費への補助を国に求め、県独自の補助制度をつくってください。

[5]防災のまちづくり

(1)学校、保育所、幼稚園の耐震化を促進してください。「私立学校耐震化緊急促進事業」だけでは不十分です。私立学校等の耐震化を促進するため県独自の補助制度をつくってください。
(2)防災無線(個別受信機)、防災ラジオ等の普及を促進してください。
(3)障害者(児)、介護を必要とする高齢者などを受け入れる「福祉避難所」の設置、要援護者名簿の整備と個別計画の策定などを促進してください。
(4)耐震防火水槽の設置、消防力の強化、井戸の確保を推進してください。霞ヶ浦導水事業を推進するため井戸を潰す計画は変更して下さい。上からの大型開発は見直し、住民と県・市町村が一緒に「防災のまちづくり」をすすめて下さい。